制作室よりこんにちは。

先日、日本古来の家紋を
植物デザインにしようと
家紋でアート作品を作りました。

KIKKAWAーKUYO
四つ切 縦423mm X 横347mm

岩国作家展のテーマとコンセプト

地元の山口県東部、岩国市の古民家ギャラリー、
いろやギャラリーさんでの出展に伴い、

テーマ 山口・岩国にちなんだ作品。
さらに掘り下げて、岩国の植物

コンセプト 和洋折衷 どちらでも飾れる
インテリアアート作品

吉川九曜紋の由来

 

周防岩国藩主 吉川家の家紋

吉川九曜紋

吉川九曜紋

中央の円二つの構成を 蛇の目文様と呼びます。
上記のように、全てが円で構成される家紋です。

現代人の私たちは、この文様は
円という図形の集合ですが

古くは円は星を表し、九曜とは
インド天文学やインド占星術が扱う
9つの天体と、それらを神格化した神であり

9つの神のスタイルを日本に導入し
日本の仏を配すると「九曜曼荼羅」となり、

さらには、この九曜曼荼羅をかたどって
文様化したものが「九曜文様」と
なったそうです。

調べれば調べるほど、
知識の沼へはまっていくようでした。

もっと詳しい内容が知りたい方は
こちらをどうぞ。

ウィキペディア九曜紋

そうして平安時代より、九曜紋は
厄除けの重要な文様でしたが

戦国時代以降は、多くの藩主の家紋とされ、
周防岩国では蛇の目に8つの星で構成した
九曜を表した文様、九曜紋の進化系
「吉川九曜紋」を家紋の一つとしています。

 

前置きが長くなりましたが、対象物を
識ってみるのと識らないで作ったり
見るのとでは、作品との向き合い方や
見え方、感じ方さえ変わったりするものです。

それもまたアート鑑賞の
面白いところですね。

家紋を「花」モチーフに見立ててデザイン化

 

日本人は古くから家紋という
シンボルマークを見慣れていますが

家紋を知らない人には
この吉川九曜紋は花に見えるのでは?と

そしてリピート配置すれば
北欧風の花ができる姿が想像できました。

イラストレーターで図案を書き
アイデアの具現化をします。

kikkawaイラレ全体図

北欧風は無理があると感じましたが
シンプルでありながら、

新鮮な作品ができる予感がし
制作に突入です。

シンプルな作品は
実は簡単のようで難しく、

チープになるか洗練されるか
紙一重です。

その辺の駆け引きが
物作りの面白さだったりします。

つつみボタンを生かした作品つくり

 

普段、新ジャンルの作品作りのために
時間があるときに少しずつ、

つつみボタンを包んで
⚫️をストックしています。

そんなことをしていたところに

これはどう?
こんなの作ってみない? と

言わんばかりに目の前に
モチーフが現れたから不思議です。

つつみボタン

サイズ違いのつつみボタンで
まるでオセロでもするかのような
パーツを作った後は

それらを美しく配置するための
ガイドの役目のアイロンシートを
製作します。

オリジナルアイロンシートでガイドモチーフを制作

正確につつみボタンを配置するには
どうしたらいいだろうか?と思案した結果

アイロンシートでガイドモチーフを作ることを
思いつきました。

上記のイラストレーターで作ったデザインを
1mmのアウトラインで制作し

それらをスキャンカットという
カットマシンで使用するために

拡張子をSVGに変えた
カット用データを作ります。

アウトライン

そうして作ったカットデータをもとに
アイロンシートをカッティングマシーンで
切り抜きガイドモチーフを作る。

 

アイロンシート

土台生地の上に、アイロンで貼り付け。
ガイドモチーフがうっすら見えますか?

最近のものづくりは制作時間より、
こうした下準備に時間がかかります。

ですが下準備に手をぬかないことが
美しい作品作りへの1番の近道です。

 

吉川九曜紋の配置と貼り付け

さあ、まずは中央の⚫️のアップリケ布
をアイロンで接着。

それらの布も特殊な接着シートを使い
スキャンカットでカットしています。

切れ味が美しいのです。

初代のスキャンカットマシンは、
数年使い倒したせいで、寿命を迎え

NEWマシンを迎え入れると
使い勝手が格段と良くなっていました。

スキャンカット

次に蛇の目に見えるように
白のつつみボタンを
ボンドで貼り付けます。

ジャノメ

ボンドです。 ボンド!!
一切縫い付けません。

それから、順に⚫️のつつみボタンを
指にボンドがつかないように
ガイドのアイロンシートの上に
貼り付けていきます。

指が大きいので、実は何個も
ボンドがついてロスをしています。

吉川九曜

ガイドになるアイロンシートは
シートが表に見えないように
若干小さく作っています。

全て綺麗に貼り付けられました。

包みボタンのわずかな高低差で
紙では表現できない陰影や

なんとも言えない可愛い
フォルムの家紋花が咲きました。

家紋ばな

過去に初めてつつみボタンを使った
作品を制作した経験で、

ボタンを縫い付けるより
ボンド処理の方が

はるかに綺麗に美しく配列できたのと、
ボンドも剥がれないこともわかったので

ひたすらボンド貼り作業をしています。

初めてつつみボタンを使った作品は
こちら ↓

幾何学デザイン作品RED TREE

吉川九曜紋

以前ならば、作品には

必ずキルトを入れる!
ミシンを使う!とか
やたらと縫いにこだわっていましたが、

今はいかに美しく作品を作るか
クオリティ高い作品を
お届けすることにこだわり

キルターゆえの手法には
一才こだわっていません。

なのでこれは単なるボンドアートですね。

ジオメトリック好きの私の表現方法の
手法がまた一つ生まれました。

作品の効能?!

今回制作した3枚の作品のうち、
このKIKKAーKUYOが一番最初に
完成したので、

岩国作家展

視界に入るところに飾り、
作業の前に眺めながら深呼吸をして
スタートしていました。

すると自然と引き込まれ
グッと集中モードに入れるのです。

それをずっと不思議に感じ
美しく並ぶリピート配置ゆえの
視覚効果とばかり思っていましたが

改めて記事を書きながら
視覚効果にくわえ、
九曜紋の曼荼羅効果もあるのかも?と
妙に腑に落ちた次第です。

インテリア事例 家紋アートを飾るとこんな見え方をします。

和洋折衷。

和でも洋の空間でも飾れる
インテリアアートが
コンセプトですが

こうしてみると

家紋アートは案外と外国の方にも
好まれるかもしれませんね。

インテリア事例

岩国にちなんだ作品を作る
植物デザインで….

かくしてこんな手順で
家紋を植物に見立てた、
独自のBOTANICAL ARTが生まれたのでした。

 

今後もつつみボタンを使った
グラフィカルなアートを
11月の個展で発表する予定です。

そんなつつみボタンアートの
制作の全工程をお披露目してみました。